語りえぬものはかく語りき

柾葉進の徒然なる随想ブログ

2018-10

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[2014-04-21]  花見と著作権  

敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ふ山桜花。


本居宣長が日本人の精神について詠んだとされる有名な歌です。桜は、単にその美しさで人々の心を魅了してきただけでなく、「散り際の潔さ」を是とする武士の在り方を体現するものとして、敷島(=日本)に生きる人間の内面そのものを育んできた花でもあります。

ともすれば淡く儚い一面をもっている桜の花ですが、この歌では「朝日」という語と結びつき、力強い生命力を感じさせます。たとえ散ったとしても、時を経ればまた必ず花を咲かせる……。それは露のような人の命に宿る、壮大な気概と躍動感の象徴でもあります。美しい生とは、そういった「弱さ」と「強さ」の絶妙な矛盾の中でこそ紡がれるものなのかもしれません。

さて、そんな感じで現代人にも変わらず愛され続けている桜ですが、今年の春は僕はバタバタしていて、ゆっくり見る機会がなかったのが残念です。住んでいる近くになかなかの名所があるのですが……。

しかし「現実世界で桜を見逃しても、2次元で見れるじゃないか」というのが現代文明の便利なところ(?)です。春を舞台にしたエロゲには、まあ、桜の絵というのは大体出てきます。当たり前と言えば当たり前なんですが、おかげで我々エロゲの徒は、いつなんどきでも春を体感することが出来ます。

  ・『春色桜瀬』 Purple soft (2008年)


春といえばこれ、と思ってしまうほどに素晴らしいOP映像です。ちなみにこのブランド、Purple softはいくつかの作品のOPムービー映像には新海誠作品からの影響が見られ、影響を受けすぎてたまに構図とかそのまま使い回しちゃってる部分もあるくらいなんですよね……。

ちなみに新海誠氏が制作したOP映像で春と言えば、これが挙がります。

  ・『はるのあしおと』 minori (2004年)


実は先ほどの『春色桜瀬』のムービーの中に、この『はるのあしおと』とほぼ全く同じ構図のカットが一箇所あります。暇な人は見比べてみればいいと思います。(ヒントは着替えシーン。)

著作権とかにうるさい昨今ではありますが、こういうのはむしろ良いことだと個人的には思っています。もちろん程度問題ではありますが。

和歌にも「本歌取り」という作法がありまして、有名な歌の表現をそのまま一部に使っちゃうわけです。要はパクリです。でも、それが和歌という文化の中で、ちゃんとした技法の一つとして認められていた。

もちろん、それを「俺が思いついた表現だ」と主張するのではなく、元の作品に敬意を表しつつ、それを引用する。周りもそれを前提として知っていて、「おお、あの作品のあの部分を生かしたのか」と、感動を分かち合う。そういうある意味おおらかな雰囲気があったんだと思います。

現代の社会では作品にもいろいろお金が絡んだりしますから、なかなかそういう自由さを許容するのは難しいのかもしれません。でも、文化とは本来そういう大らかさの中でこそ発展するのも事実です。和歌がそうであったように。

最近はTPP参加によってコミケなどでの2次創作が取り締まられるかも……といったことも時々話題になってますが、個人的にはそれはあまり起こってほしくない事態ですね。なんだかんだで、コミケ会場のあの雰囲気の中にこそ「文化」らしさが生き残ってるのを感じます。もちろん売り手にも買い手にも非常識な人はいるようで時々問題になっていますが、やっぱり、多くの同人誌からは元作品に対する愛を感じます。ああいう空間が無くなるのは損失だと思います。

あとは著作権が70年になるのもやめてほしいですね。もうあと数年で谷崎潤一郎や三島由紀夫、川端康成が青空文庫で読めると思って期待しているのに。もちろん好きな作品は紙の本でも持っていますが、外でふと時間が空いて本も持ってないというときに、スマホで名作文学がスッと読めるというのはかなり得難い便利さです。それがもし20年間更新なしになってしまったら、ちょっと悲しいものがあります。

数年後の春には、名所の桜を見ながらふとスマホで谷崎潤一郎の『細雪』を開き、あの平安神宮の花見のシーンを心静かに読み上げたいものです。(まあそこまで計画するなら紙の本を持って行けよという話ですが。)


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