語りえぬものはかく語りき

柾葉進の徒然なる随想ブログ

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[2015-04-21]  プリパラ  

世の中には「女児向けアニメ」というものが存在します。

土曜や日曜の朝にやってるアニメですね。文字通り幼い女の子向けに作られたアニメですが、大の大人がそれを見てはいけないという法は存在しません。むしろ大人だからこそ楽しめる面があります。(変な意味ではありません。いや、まあどこからどうみても変ではあるんでしょうけど……)

結論から言うと、今やっている『プリパラ』という女児向けアニメが、びっくりするほど面白いんですよね。

知人から勧められて、最初は正直「うーん、女児向けアニメかー……」と気乗りせず見ていたのですが、いつのまにかドハマリして、毎話少なくとも2周はするようになってしまいました。僕は基本的にアニメは何度も繰り返して見るタイプではないので、毎回2周するというのは僕にとって結構どえらいことです。

物語の概要としては、女の子ならば誰でも気軽にアイドルになってライブができる“プリパラ”というアミューズメント施設がある世界で、主人公の真中らぁらを中心に、個性溢れる少女たちがときには切磋琢磨し、ときには友情を深めあいながら、アイドルの頂点たる“神アイドル”を目指していくというものです。

月並みなストーリーだと侮るなかれ。王道は、実力のない者がそれを真似れば途端に陳腐なものと化しますが、しかしそれはやはり“王の道”なのです。本物とは、基本に則った形の中でこそ魅力を紡ぐことができる者のことを指すのであります。

この脚本はほんとうにすごい……。もう、とにかくすごいのですよ!

何より刮目すべきは伏線の緻密さです。1期が全部で38話、2期が現在3話という非常に長いスパンの作品ですが、驚くべきはどれ一つとして無駄な話が無いということです。もちろん大筋に直接関係のない、いわゆる水増し的な役割の回も存在します。しかしプリパラのすごいところは、そのときには水増しにしか見えなかった話が、のちのちになって別の事柄を描き出すための布石になっていたという構成美が多数見受けられることです。下手をすると、30話以上前のあの出来事がまさか伏線だったとは……ということさえあります。

またキャラクターの個性に関するダイナミズムも特筆すべきものがあります。レオナというピンク髪のキャラがいるのですが、どこからどう見ても少女の姿なのに、「実は男の子」という驚愕の事実が途中で明かされます。これには視聴者もびっくりしました。一部の大人の視聴者には、まつげの描き方や脚の動かし方から「男の子ではないか?」と推測していた猛者もいるようですが、本来の視聴者である女児たちはさすがにそこまで気付かないでしょうし、レオナを少女として応援している人も多くいたであろう中、そのような斬新なキャラ設定を堂々と発表してしまうあたり、スタッフの男気を感じることができます。

シナリオにはときどき頭のおかしい設定がでてくるのも魅力です。たとえば主人公の通う私立パプリカ学園の校則はやたら条数が多く、1話に出てくる「廊下を走ってはならない」は第3243条、8話に出てくる「こまめな水分補給を怠ってはならない」が第35439条と、そもそも校則なのかというレベルの細かい規定が何万と存在するようです。

しかし素晴らしいのが、これもまたある話の布石となっているところです。その何万とある校則をすべて覚えていて、ことあるごとに生徒の校則違反をとりしまる生徒会長もまたアイドルなのですが、32話で彼女はアイドルとしての自分のありかたに疑問を感じ、自信を無くしてしまいます。そんなとき、生徒会の副会長が、彼女に対して校則違反のチケットを切り、「第1条、生徒は自分に自信を持たなければならない」といさめるのです。いつも他の生徒の校則違反を指摘していた彼女が、逆に誰かから指摘されるという意外性とともに、何万とある私立パプリカ学園校則の気になる第1条が、「自分に自信を持て」と生徒を励ますような内容であったという深い示唆性がそこにはあります。細かい規則よりもまずは自分を肯定しなさいというメッセージ、これはニーチェが提唱した絶対的な生の哲学にも結びつくというのは深読みでしょうか。(さすがに深読みですね、はい。)

ライブは3DのCGで再現されるのですが、この完成度も高いです。基本的に衣装は毎回変わるものの、ダンスや表情については使い回しできるのでコスト的にも効率が良いのでしょう。しかし僕も偶然に気付いたことなのですが、1話のライブ開始時の主人公の表情は、2話以降のライブ開始時の表情とやや違っているのです。1話は初めてのライブということで、緊張というかためらいが混じったような表情を一瞬浮かべるんですよ。「芸が細かいなぁ」と思っていたんですが、なんと1期のクライマックスである37話において、再び1話と同じ表情が使われるんです。37話では主人公にとって辛いことがあり、それを乗り越えるためにライブで歌うというシーンなのですが、最初のライブで踏み出した一歩を思い出しながら、再び仲間とともに前に歩きだすというその心境をみごとに表現した演出だなと感銘を受けました。

ここに挙げたものもほんの一部で、見れば見るほど「ここはこういう意味だったのか」という発見がある、実に奥深い作品だと思います。幼い女の子たちを見下すわけではありませんが、彼女たちはおそらく一度見たらそれで終わりで、深く分析するということもしないでしょうし、その楽しみ方で十分だと思います。しかしこのアニメは「女児だけが見るには、あまりにももったいない」と言える作品なのです。(キリッ


  *  *  *


ゲームセンターにプリパラコーナーがあり、小さな女の子たちに目下大人気らしいですが、そこにときどき大人の男性が順番待ちで並んでいるところもよく目撃され、「プリパラおじさん」と呼ばれているようです。

「日本大丈夫か……」と思ってましたが、まさか自分がプリパラにはまってしまうとは夢にも思いませんでした。とはいえゲーセンに行って女の子にまじって遊ぶ勇気はまだ僕にはありません。

世のプリパラおじさんはどれだけ心臓が強いのだろうか。僕も精進しなくてはなりません。まあでも、もともと女児向けのゲームなのだから、彼女たちの機会を損なうようなことは避けるべきとも思いますが。できるだけ空いてるときにプレイし、幼女先輩がいらっしゃったら席をお譲りしてさしあげる。それくらいのマナーをわきまえてこそ、真のプリパラおじさんたりえるのではないかと思います。

まあ何にせよ、ゲームよりはアニメですね。奇をてらった設定の作品や、人物や背景絵がきれいな作品もすばらしい。しかしこの「プリパラ」のような、伏線が幾重にも練られた見応えのある脚本を味わうこともまた、自らの心の豊かさをより一段高めてくれるような充実感があるのです。


■ 参考作品
・『プリパラ』 タツノコプロ、DONGWOO A&E (2014-)


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